壹岐倫子(Tomoko Iki) による「river,830602 」展において発表された 写真作品。美しい抽象絵画のような作品は現実をとらえた写真作品である。目の前に起こる自然の現象と、その中にある目には見せないものを映し出す。コントロールできないものの中にある真実を映し出す作品。
素材:阿波和紙 / インクジェットプリント / アルミニウム
inkjet print on Awa Washi paper / aluminum
サイズ A4 / 210 mm × 297 mm(21 cm × 29.7 cm)
本作の出発点には、舞踊を通して培われた身体感覚がある。身体は目に見える対象を認識するだけでなく、光や空気、重力、流れといった言語化される以前の作用と絶えず関係を結んでいる。撮影行為は、そのような環境との応答の延長線上に位置している。作品に現れるイメージは、異なる瞬間に生じた光や運動の痕跡が重なり合うことで形成される。単一の時間や視点によって捉えられた風景は解体され、そこには日常的な知覚では捉えきれない複数の時間や運動の層が立ち現れる。眼前を流れる隅田川の水面は、光の反射や都市の気配を取り込みながら、その瞬間ごとに異なる表情を生み出している。重ねられた時間の軌跡は、川そのものを記録するのではなく、変化し続ける世界との関係性を映し出している。本作は、重ねられた時間の軌跡を通して、私たちが世界をどのように認識しているのか、その枠組みに静かな揺らぎをもたらす試みである。文 : 壹岐倫子 (Tomoko Iki)